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命の境界線

昨日、「爆笑問題のニッポンの教養」というNHKの番組を見ていたら、
東京農業大学の河野友宏先生が出てました。

この方は、世界で初めて
メスとメスの親から仔マウスを誕生させた方です。

マウスの遺伝子を改変することによって
そんなことが可能になったのですが
この番組では、
「本当にこんなマウスを作ってもいいのか?」
という生命倫理についての議論がメインでした。

遺伝子をいじったマウス、というのは
いまや生命科学になくてはならない存在です。
培養細胞の実験では、証明は不十分であり、
生体内ではどうかを示すのに、
特に遺伝子を改変したマウスを用いた実験結果を
求められることが多いです。

この先生がおっしゃっていたのは
「マウスの遺伝子を改変するのは抵抗がない。
だけども、うさぎなどのそれ以上の生物については
どうかと思う。」
ということ。
この感覚は、私にもなんとなくわかります。

この点について、爆笑問題のお二人は
「じゃあ、その境界線は、なんなのか?
それは、どういう基準によるものなのか?」
ということをつっこんでいました。

私は、慣れ、でしかないような気がします。
当たり前のようにそこにあれば
特に何も思わなくなる。
マウスを用いた実験が増えれば
遺伝子を改変しても何も思わなくなる。
でも、あまり実験例がない高等な動物だと、
慣れていないし、感情移入をしてしまいやすいから
違和感が大きくなっていく、というような感じに。

例えば、クジラ漁の問題なんかも
これと似ているのかもしれません。
当たり前に食べていれば、特に何も思わない。
食べない人からすれば、そんな高等動物をたべるなんて!
と嫌悪感を示してしまう。

少し違いますが、口蹄疫で牛を大量に
処分しなくてはならない、という報道がなされています。
たしかに農家の方々の被害は甚大ですが、
処分される牛はかわいそうなのか?
もともと食肉用の牛という運命なので
食肉になるのはかわいそうではなくて、
病気で処分されるのはかわいそうなのか?
この是非はともかくとして、
慣れによる感覚の違いがあるような気がします。

慣れてしまえば、問題ないという意味ではまったくなくて
慣れてしまったとしても、本当にいいのか悪いのかを
しっかり考える必要があるのだと思います。

関係ない人はいない問題だと思います。
もちろん私も含めてです。
命の境界線について、一緒に考えてみませんか?


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トムとジェリーの違いは?

自分にとっては大きな仕事がとりあえず一段落したので
久しぶりの更新です。

Cellという月刊の科学雑誌の最新号が今日オンラインで出てました。
今月号の表紙を見て、びっくり。
ねずみの後ろに猫が迫っているような表紙です。
なんだか、ちょっとドキドキしちゃいます。笑

この表紙になったもとの論文がなかなか面白かったので、
簡単に紹介します。

The Vomeronasal Organ Mediates Interspecies Defensive Behaviors through Detection of Protein Pheromone Homologs
Fabio Papes, Darren W. Logan, Lisa Stowers Cell, 141 692-703 (2010)

ネズミの天敵といえば、猫!
というイメージがあります。
野生のネズミは、猫やヘビやドブネズミ(ラット)などの
天敵に遭遇すると、一目散に逃げていきます。

同じように、研究室で飼われているような
一度も猫やヘビなどの天敵に出会ったことのないネズミでも
天敵のにおいがしたら、そのにおいのもとを避けようとする、らしいです。

では、ネズミは天敵の「何」を感じ取っているのでしょうか。

この正体が「天敵のフェロモン」である、ということがわかりました。

ここまでだと、たしかにそれはそうかもーで終わってしまうのですが、
ここからがちょっと面白いところ。

この「天敵のフェロモン」にとてもよく似たフェロモンを
ネズミ自身が発しているらしいのです。
この「ネズミのフェロモン」は、
ネズミ同士が、お互いに仲間だ!
と認識するためのフェロモンらしいです。

つまり、天敵が発する、逃げろ!という合図のフェロモンと
ネズミが発する、集まれ!という合図のフェロモンがそっくりだということです。

このフェロモンの違いをどうやってネズミが識別できるのかを
明らかにするのは、これからの課題のようですが、
小さな違いをかぎわけられるジェリーは
やっぱり賢いですね!

DHAや脳トレの本当の効果は??

毎日更新しようと思ったのですが、
一週間ちょっとで挫折してしまいました。
やっぱり無理はよくないですね。笑

連休中に、Yahooニュースを眺めていたら
「エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)では
頭はよくならない。」
というタイトルの記事を発見しました。
元論文はこれですね。
「頭がよくなる!」として
数年前に、魚の頭に多く含まれるEPAやDHAが大ブームになりました。
現在もサプリメントとして売られています。

これらには「認知機能の改善効果がある」という報告もあるようですが、
今回のこの論文は70~79歳ののお年寄り867人に2年間
サプリメントを飲んでもらった結果、
飲んでいない人(偽薬を飲んだ人)と比較して差がなかった
という報告です。
人数の規模からすると、比較的信ぴょう性が高いのかなーと思います。

最近、もう一つNature誌に
「脳トレには効果がない」
という論文が出ていました。
これですね。
これは18~60歳の人たち、一万人以上を対象にした結果です。
1万人以上ってすごいですね…。
効果がない、というのは具体的には
トレーニングしたクイズの成績は上がるけど
それ以外の問題を解く能力は上がらない、ということです。
まぁ、それはそうかも知れないなーという気がします。

最近、「脳力」アップを売りにするするクイズ番組が
出てきていますが、それらに関しても
暇つぶしの頭の体操にはなっても、
実際の効果は期待しない方がいいということかもしれませんね。

大流行したものも、信じすぎないのが大事なのかもしれません。



科学に関する新聞記事の読み方。

新聞やYahoo!ニュースなどで

「**は△△であることが
〇〇大学のグループによって明らかとなった」

というような科学に関する記事がよくあります。
たくさんの人に読んでもらうために
人目をひくようなタイトルがついていることが多いのですが
それらは必ずしも
信頼に足る正しい情報であるとは限りません。

どの程度の信頼度がある記事であるのかを
見分けるための、簡単な方法を書きたいと思います。
(あくまで、一般的にという話です)

1. どこかの科学雑誌に掲載された成果について書いてある記事
2. どこかの学会で発表された成果についての記事
3. 雑誌や学会で発表されたわけではない成果についての記事

この中で一番信頼度が高い記事は、
1の雑誌に掲載された成果についての記事です。

科学雑誌に掲載された、ということは、その分野の専門家が
その成果に関する論文を読んで、
掲載する、掲載しない、と判断する審査を経ています。
よって、ある程度の信頼性は保証されています。
ただし、論文のランクや質によって
掲載されやすさ(信頼性の高さ)がちがうので
100%ではありません。

3が最も信頼性が低い、というのも
わかりやすいと思います。
これは、おそらく研究者が記者に成果を売り込みに行ったり、
逆に、記者がネタとなりそうな研究者のところに
取材しにいってできたであろう記事なので、
専門家の審査を経ていない、という意味で
客観性が低いです。
ただ単に記事の文字数が少なくて、
書かれていないだけということもあるかもしれないし、
記事になったということは、それなりの研究者の成果であるため
信頼性は0%ではありませんが、
あまり間に受けないで、こんなことをしてる人がいるんだ~
という程度にとどめるのがいいと思います。

問題は2です。
学会で発表された、というのは
一般の人からすると、かなり信頼性が高い情報だと
判断されるのではないかと思います。

しかし、学会の発表には、実質的な審査がない場合がほとんどなので
実はそれほど信頼性が高くはありません。

なので、記事の信頼性は1>2>3と
なります。

もう一つ注意するべき点は
人目につくようなタイトルや、受けが良さそうな内容にするために
記者の解釈や判断で記事ができあがります。

研究者が、その記事をチェックすることもあるようですが
そうではないことも多いようです。
そのため、実はちょっと間違っていたり、
「将来的には**の治療につながる、かもしれないけど
今は臨床応用までは程遠い」というようなことも
「もうすぐ応用されて、一般の人もその恩恵にあずかれる」というような
ニュアンスで書かれていたりすることもあります。

新聞記事を鵜呑みにしないで、たまにはこのように
うがった記事の見方をしてみてください。笑

アルコール無毒化 大作戦!

最近、お酒を飲む機会が多いです。

私はお酒を飲むことはできるますが
かなり弱くて、すぐに真っ赤になってしまいます。

経験的に、親がお酒に強ければ、その子どもも強いことが多いですよね。
その逆もしかりです。

これはなぜかというと、親からもらう遺伝子によって
お酒に強いか弱いか、がほぼ決まってしまうからです。

アルコールは体内に入ると、アセトアルデヒドというものに
形をかえます。
このアセトアルデヒドが悪酔いの原因となる物質です。
この悪酔い成分を無毒化してくれるのが

アルデヒド脱水素酵素

というもの。
この無毒化!酵素には

有能タイプ☆ と 無能タイプ…

があります。
この無毒化!酵素を作り出す遺伝子は
二つで1セットになっていて、
父親と母親から、子供はひとつずつ受け取ります。

つまり、
父親が 有能タイプ☆ と 有能タイプ☆
母親が 有能タイプ☆ と 無能タイプ…を
持っていた場合、
その子供の遺伝子は、
有能タイプ☆(父)と有能タイプ☆(母)か
有能タイプ☆(父)と無能タイプ…(母)
となるので、原理的には50%の確率で
お酒にとても強い子! か まぁまぁの子。
となるわけです。

それほどお酒に強くない、まぁまぁの人でも
毎日すこしずつ飲み続けて
無能タイプ…に鞭打つと、無毒化酵素が少しずつ増えて
少しは飲めるようになりますが、
有能タイプ☆を二つ持つ人にはなかなか適いません。 

私は母親が強くて、父親がまぁまぁなので、
おそらく 無能タイプ…(父) と 有能タイプ☆ (母)
なのだと思います。
もっと強い子に生まれたかった…!
身の程をわきまえて、おいしく少しだけ飲むことにします。



プロフィール

ごみさぶろう

Author:ごみさぶろう
ステキな科学者になりたいと思っているひよっこです。
茶道をならっていたり、和風なものが大好きです。
よろしくお願いします。

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